イスラム教が国教だったオスマン帝国から、政教分離のトルコ共和国になり、現代のトルコで飲酒は御法度ではありません。
トルコのラクは、ブドウから作られアルコール度数は45度前後の非常に強い蒸留酒です。そのままだと無色透明なのですが、水を入れるとカルピスのように乳白色になります。ラクに使われているアニスが白濁させると言われています。この色からライオンのミルクとも呼ばれています。
『食文化〜その歴史を通して』(Murat BELGE "Yemek Kültür~tarih boyunca")という本によると以前は、ワイングラスのような脚のついたグラスで飲まれていたそうです。ストレートで飲むのに適していたのでしょう。しかし、今日では、氷や水を入れて飲むので、上の写真のようなグラスで飲まれています。
このラク用のグラスに、先ず、氷を入れそこにラクを注いで飲むのが正しいという人もいれば、いやラクが先で、そこに水と氷を入れるのが正統だと言う人などもいて、それぞれに好みやこだわりがあるようです。
ラクは、ケバブや魚料理と一緒に好まれますが、やはり一番のお相手は豊富な前菜です。中でも特に、白チーズ(beyaz paynir:日本ではこれをギリシャのフェタチーズと呼んでいます)とメロンまたはスイカを添えた前菜は必須です。そして、同じく欠かせないのは、友人たちとの語らいです。ラクの宴会(rakı alemi, rakı meclisi)というような言葉もあるほど、ラクは前菜を前に友と語り合いながら、ゆっくりゆっくりと何時間もかけて楽しむものです。トルコ語にはアラビア語源のサキ(saki)という言葉があり、これは、宴会などの酒の席で、お酒をサーブする人のことを言います。このような言葉が残っていることから思えば、お酒が禁止されていた頃から酒宴はあったようですね。
私はお酒が好きですが、このラクだけは、アニスの香りとその甘さにどうしても馴染めませんでした。そこでラク好きのトルコの友人から、どうすればラクをもっと美味しく飲めるかについて教えてもらいました。それによれば、
先ず、口に物が入っているときには、ラクを飲まない。
ラクは、少しずつ口にいれ、すぐに喉へと流し込む。口の中に溜めておかない。
ラクを飲んだらすぐに、ヨーグルトやチーズなどの乳製品を食べる。
この規則を守りましたが・・・
やっぱり私は、同じブドウから作るならワインの方がいいですね。