マントゥは水餃子やラビオリに似た料理です。小麦をこねてつくった生地に羊のミンチを一つ一つ包み、茹でたものにニンニクヨーグルトとトマトペーストのソースや溶かしバターをかけます。その上にお好みでドライミント、唐辛子、紫蘇ににたスマックという香辛料などをかけることもあります。茹でたスープと一緒に食べる地方もあります。トルコで一番有名なのは、カイセリという街のマントゥで、どうやったら作れるのかと思うほど小さく、一つが小指の第一関節ほどの大きさです。全く気が遠くなるような作業だと思います。作るのは大変ですが、美味しいのであっという間に食べてしまいます。
中央アジアからアナトリア、コーカサス地域 や中国のウイグル自治区にもあり、それぞれに大きさや調理の方法が違います。
『スルタンの台所〜15,16世紀のオスマン宮廷料理』(Stefanos Yerasimos 'Sultan Sofraları〜15. ve 16. Yüzyılda Osman Saray Mutfağı')という本によると、このマントゥは、1453年にイスタンブルを征服(「征服」か「陥落」かについての思いは、また別枠にて)したオスマン朝7代メフメット2世の食卓にも上がっていました。当時のスルタンの食事は、朝と夕刻の2食だったそうです。重きは朝食に置かれていましたが、メフメット2世の食事はシンプル且つあまり変化のない均一的な内容でした。
1496年6月の宮廷台所仕入帳に、2日以外の朝食には毎朝、このマントゥの名前が出ています。そしてイタリアではメインの前にパスタが出るように、オスマンの宮廷でもマントゥはメインの前に出されていました。
マントゥがなかった1日には、メインに魚料理があったそうです。マントゥにヨーグルトソースがかかっていたからだと思います。トルコでは魚と一緒にヨーグルトは食べ合わせが悪いと言いわれ、一緒に食されません。この頃からの風習なのですね。
上の写真は、トルコでお呼ばれして頂いた自家製のマントゥです。マントゥは、シェルベットと言われる甘い果物のシロップ水(冷たいデザートとして私たちが知っているシャーベットは、イスラム圏の甘いシロップ水であるシェルベットが始まり)と一緒に頂くそうです。アルコールはお預けです。
写真2は、日本でどうしても食べたくなり、餃子の皮で作ったマントゥです。