2017年6月26日月曜日

断食月明けのお祭り、ラマザンバイラム〜シェケルバイラムとも言われ甘いお菓子を食べお祝いをする〜

Tüm yürekler sevinç dolsun, umutlar gerçek olsun,
acılar unutulsun, dualarınız kabul ve Bayramınız mübarek olsun.

断食月が終わり、3日間のラマザンバイラム(シェケルバイラムとも言う)が始まりました。バイラムという言葉は、祭りや祝日という意味です。断食をしアッラーの承諾を得たことへの喜びを表すことがラマザンバイラム(ramazan bayramı)です。(Kamil Toygar 'Ramazan Yemekleri ve Mutfak Kültürü', M.Sabri Koz'Yemek kitabı' I 〜Tarih-Halkbilimi-Edebiyat〜) 

バイラムの初日の朝、男性はモスクにお祈りに行き、残った女性は、普段より豪華な朝ご飯の用意をします。そして、家族みんなでバイラムを祝い、朝ご飯を頂きます。 それから、お客を待つのではなく、年配の親戚、それぞれの実家、そして、友人知人たちへの訪問が始まります。
全くトルコ語ができない頃、バイラムに一人でいては寂しいからと、友人が実家に招待してくれました。その時、親戚の家々にも連れて行ってもらったのですが、何せ言葉が分かりません。「退屈ですか?」と聞かれましたが、まさか「はい、そうです」などと、日本語の教科書に書かれている受け答え通りに、答えるわけにはいきません。皆が話している間、顔だけはニコニコさせながら「退屈だな…早く帰りたいな…」と思ったものでした。
バクラヴァやカダイフなど色んなお菓子が売られています
次に今度は、家に親戚や友人たちの訪問が始まります。その度に、バイラムを祝い、お茶とお菓子を出します。シェケル(砂糖、甘いもの)バイラムとも言われ、たくさんの甘い物が出てきます。大抵はパイのような、甘いシロップ漬けのバクラヴァと言われるお菓子を出します。バイラムの準備のために、家で作ったり買って来たりした大量のバクラヴァが用意されます。

また、バイラムの食事としては、チキンスープ、肉入りピラフ(羊肉か牛肉)、ケシュケキ(麦や肉、ミルクなどを煮込んでつくるお粥に似た料理、宗教的な行事や結婚式、葬式でしばしば出される)、ボレキ(パイに似た料理で、中身はポテトやチーズ、法蓮草やミンチなど多種)などがあります。Kamil Toygar 'Ramazan Yemekleri ve Mutfak Kültürü', M.Sabri Koz'Yemek kitabı' I 〜Tarih-Halkbilimi-Edebiyat〜) 

子どもたちは、ご近所さんの家々にバイラムのお祝いを言いにまわり、まるでハロウィンのように、キャンディーやチョコレートなどのお菓子をもらい集めます。バイラム前のスーパーには、このための大袋入りのキャンディーなどが売られています。

最後に、バイラムには、「バイラムじゃないか、仲良くやろうよ」と仲違いしている人たちに仲直りの機会をもたらすという、もう一つの意味もあります。友情や親戚付き合いを強めるいい機会なのです。昔の日本のお正月やお盆のようなものですね。トルコでも、年によってバイラムの時期と週末とが繋がり、大型連休になることがあります。近年は、そういうバイラムの連休を利用して、旅行に出かける人が多くなりました。ですが、それでも、バイラムは、家族や親戚、知人と共に祝う、大切で特別な祝日なのです。
 



2017年6月13日火曜日

断食月ラマザンのうんちく〜その2・断食明けの毎日の食事、イフタールのご馳走〜

ラマザンでは断食をすることにより、空腹を知り飢えた人の気持ちを知ることが重要だとされています。また食事を分かち合うことが大切です。イフター ルには、断食しているいないに関わらず、家族や親類、ご近所さんや友人など、多くの人を招待したり、されたりして食卓を囲みます。先ず、目上の人たちを招 待するのが、礼儀だそうです。異教徒も招待されることがあるので、私もよくご馳走になりました。



ラ マザン中は、このイフタールの時間に間に合うように帰る人たちで、毎日道路は大混雑。クラクションや喧嘩の声が響き、混沌たる喧噪でした。喧嘩はタブーの はずじゃなかったのかしら・・・ バス停で、イフタールに間に合わない人は、イフタールの時間を知らせるエザンが読まれ始めると、おもむろに鞄からパンを 出して、かじっているのを目にしたこともあります。
ラマザンの時に食べるピデというパンを買う人の行列
ナツメヤシやナッツ類

イフタールでは、最初に水を飲みナツメヤシを口にして、断食明けの食事が始まります。普段 より、ご馳走が並びテレビでは、イフタールメニューの料理番組がたくさん流れます。 スープからデザートまでのフルコースです。しかし、食べ過ぎたり、急いで食べたり、油っこいものをとり過ぎると体によくないと繰り返し放送されます。レス トランなどでは、イフタールの特別メユーが提示されます。人々は、セットされたテーブルに座り目の前のご馳走を眺めながら、ひたすらエザンが読まれるのを お預け状態で待っています。昔のイフタールには、イシュケンベチョルバスという羊の胃のスープ(işkembe çorbası)が、大層好まれていて、イフタールの10分ほど前には、お皿を持って店の前に並んでいたそうです。(Kamil Toygar 'Ramazan Yemekleri ve Mutfak Kültürü', M.Sabri Koz'Yemek kitabı' I 〜Tarih-Halkbilimi-Edebiyat〜)

断 食が始まる前にサフールをとらないと、その日の日没まで飲み食いできません。 寝坊は厳禁です。昔のラマザンでは、マーニ(mani:トルコの詩の形式の一つ)を読みながら、太鼓を叩いてサフールの時間を知らせるのが習わしでした。 ラマザンが終るとお金を集めにまわり、人々は心づけとして渡していました。(Kamil Toygar 'Ramazan Yemekleri ve Mutfak Kültürü', M.Sabri Koz'Yemek kitabı' I 〜Tarih-Halkbilimi-Edebiyat〜) 私が住んでいたころには、マーニーが読まれていたのか分かりませんが(何せ熟睡の時間です)大きな太鼓の音で、ドンドコドンドコと毎日まだ暗いうちに無理矢理起こされて、ちょっと迷惑でした。

ではここで、断食月ラマザンの長い夜に一つトルコの小咄を・・・
ラマザンにとっておけ
 昔、あるところに一人の男がいました。男は何でも一番いいところを、よけてとっておいていました。 「これを、ラマザンにとっておいとくれ」と妻に言いました。
 ラマザン月がきました。美味しいご馳走が用意され、イフタールの食卓が一杯になるほど運ばれる日々が始まりました。
 ある日、一人の乞食がドアをたたきました。「アッラーのために、どうかお助けを・・・」と物乞いしました。妻は「名前は何て言うの?」と聞きました。
「ラマザン」
「ラマザンですって?ちょっとお待ち、そうなら・・・」
 家にとっておいた美味しい食べ物や飲み物全てを、ドアを埋め尽くすほど持ってきました。
 「これ全部持ってお行き。うちの人は、あんたにとっておいたんだよ」と言いました。
  その日の夕方、夫が帰って来たてから、何があったか説明すると、大層たたかれてしまいました。どうしようかと、二人でふさぎ込みました。一年かけて、とっ ておいたものが一日でなくなってしまったのです。このまぬけさを、毎晩違ったご近所さんに行き、話して聞かせ、ご馳走になろう。
 このようにして、ラマザン月に小咄や昔話が話されるようになったそうです。
(Kamil Toygar 'Ramazan Yemekleri ve Mutfak Kültürü', M.Sabri Koz'Yemek kitabı' I 〜Tarih-Halkbilimi-Edebiyat〜)





断食月ラマザンのうんちく〜その1・嫌いだったラマザンが楽しくなる〜

2017年の断食月が、5月26日から始まっています。ラマダンやラマザンと呼ばれていますが、ラマザン(ラマダン)はイスラム暦第9月の名前で、断食という意味ではありません。この月に断食が行われるということです。イスラム暦なので、前の年より11日ほど、早く始まります。

断食はオルチ(oruç)とトルコ語で言います。日の出から日没まで、飲食ができません。もちろん喫煙もできず、喧嘩や悪口などの汚い言葉を使う事も、そして性交渉もタブーです。

夜明けとともに断食が始まり、日没とともに断食の終わりに食べる食事をイフタール(ihtar)といい、断食が始まる前に食べる食事のことをサフール(sahur)と言います。これが約1ヶ月続きます。

断食をしている間は、飲食禁止で食事の味見もできないため、料理の味が毎日少し変わる食堂などもあると聞いたことがあります。

イスタンブルに住む前に、初めてトルコに住んだ町はアナトリアの田舎でした。そこで初めて断食月ラマザンを経験することになります。イフタールの時間は、外に人っ子一人いなくなり、まるで昔の日本の大晦日、除夜の鐘がなる前のような静けさでした。暗くて物寂しいその中を、一人トボトボ歩きながら帰ったこともありました。公共交通機関は全部ストップ。バスに乗り遅れようものなら、1時間以上、雪の降る(当時のラマザンは冬でした)凍えるような寒さの中、震えながらバスを待つことになります。バス停の横にある暖かい店の中で、食事をとっている人を、ガラス越しに恨めしく眺めたものです。

別の地方から来た学生が、日中タバコを吸っていると、見ず知らずの人から殴られて青あざを作ったということを何度も耳にしました。

一番嫌だったのは、ラマザン期間中、町の酒屋さんが閉まってしまうことでした。 4年間その町に住んでいましたが、最後には大手スーパーができたので、ラマザンが始まる前に思い荷物を運ぶことをしなくてもよくなりましたが、とにかく、私は暗くて、寂しいラマザンが当時は嫌いでした。

ところが、イスタンブルに来て驚きました。飲食店が開いている!!公共交通機関も動いている!!イフタールの時間に外に人がいる!!そして、日没後に色んな催し物があり、屋台なども出て、毎日まるでお祭りのようでした。ラマザンって、楽しいものだったの?
認識が一度に変わりました。
色んな屋台が出て人々で大賑わい
余興に音楽の演奏も

炭火で作るトルココーヒ占い付き

2017年6月3日土曜日

朝ご飯にスイカ〜諺や慣用句にもなる、トルコの夏にはかかせないスイカ〜

急に暑くなりました。暑くなると大好きなスイカが食べたくなります。スイカはトルコ語でカルプズ(karpuz)といい、少し楕円形で、テクスチャーは日本のものより硬い感じで、ザクザクしています。

イスタンブルに住んでいた時には、毎週のようにリュックを背負ってバザールに買い物に行きました。買い物に来ていたおじさんに「スイカのおしりを手で叩いて、ボンボンと弾むような音で甘さが分かるよ」と教えてもらい、日本と同じだな・・・と思ったものでした。しかし、トルコではスイカは1つ買わなければいけません。(日本に戻り、スーパーに二口ほどで食べ終る小さく切られたスイカが売られていて、その値段を見て大層驚きました)独り暮らしの私には、多過ぎますが半分などと買うことができません。でも、食べたい!! できるだけ小さいサイズを選ぶのですが、それでも何キロもあり、スイカだけでリュックが一杯になり、のけ反るようにして家に戻ったものです。そして、その日から毎日スイカを食べることになります。夏になると友人に「またスイカをご飯の換かわりにしてるんじゃないの??ちゃんと普通のご飯も食べてよ」とよく言われました。

暑い夏には、食欲がなくなります。トルコ人の友人宅では、パンとスイカと白チーズ(日本ではフェタチーズと呼ばれています)のみが朝食に上がることもありました。最初は、スイカとパンにチーズ?!!と思いましたが、スイカとチーズは、前菜としてお酒のあてにもなりますから、チーズの塩気とスイカの甘さがマッチしています。でも、スイカをおかずにパンを食べるのはやはり・・・

日本では、スイカに塩をかけて食べることがあると言うと、トルコの友人たちは 一様に「信じられない!!」と反応していましたが「スイカと白チーズはどうなの?同じじゃないの?」と聞くと、妙に納得していました。お互い自分たちの文化は当たり前で、相手のことには驚くことが多いですね。

トルコの夏にはかかせないスイカですが、トルコ語の諺や慣用句にも、このスイカが使われているものがあります。気になって日本語にはあるのか、調べてみましたが「西瓜は土で作れ南瓜は手で作れ」という諺しか見つかりませんでした。物の性質を知り、それに応じて育てるという教訓だそうです。

これに対してトルコ語には
・一脚の肘掛け椅子に二つのスイカは入らない(İki karpuz bir koltuğua sığmaz) :同時に二つ以上の仕事や用事などはできない
・スイカの皮を見る前には海に入るな(Karpuz kabuğunu görmeden denize girme):何かをするのであれば一番適した時期が来るまではしてはいけない
・メロンとスイカは横になりながら大きくなる(Kavun, karpuz yata yata büyür):なまけている人をからかう時に使われ、なまけるなという意味
・スイカは蔓で大きくなる(Karpuz kökeninde büyür):子どもは生まれ育った環境で成長する
などがあり、トルコでは諺や慣用句が日常会話にもよく登場します。

また、ゲストが「さあ、そろそろお暇を・・・」と口にした時、「あら、もうお帰り?まだスイカを切るところだったのに(Daha karpuz kesecektik)」と言うことがあります。「もう少しいいじゃないですか」という社交辞令的でユーモアのある言葉ですが、深夜の1時2時にこれを言うと、かなり嫌みになりますね。なのでこの言葉は、ごく親しい間柄の友人たちにしか使えません。そして何故か冬でも「スイカ」なのです。トルコの友人宅での帰り際に、この言葉を聞いて「あら、まだスイカが用意されていて、出て来るのね」と思うと大間違いなので、ご注意くださいね。京都の「ぶぶ漬けでも・・・」と同じような使い方なのです。


上の2枚はトルコの友人の面白いスイカの食べ方です。スイカの上の部分を切り、そこから食べたいだけ中身をスプーンでくり抜きます。そして、切り取った部分を帽子のように被せて冷蔵庫に入れ保存します。こうすると、乾燥も防げ長持ちするとのことでした。でも、このスイカが縦に入るほどスペースがある冷蔵庫か、大きな冷蔵庫が必要ですね。