料理とは関係ない話ですが「トルコに来たな…」と、実感することがあったので、綴ります。
イスタンブルでの滞在先は、アジア側の少し辺鄙な所です。そこからヨーロッパサイドには、バスに乗って行きます。
昨日、博論の指導教官だった先生宅に行くために、背中にパソコンや書類を入れたリュックを背負い、もう一つ大きな鞄を持って、バスに乗りました。いつも、座ることは不可能なほど、混んでいます。
乗ったバスが、一つ目のバス停で止まって出発したと思ったら、そのまま、また止まってしまいました。私はバスの中の通路に立っていて、フロントガラスから前が見えていました。
どうやら、信号のところで、バスの4台前のベンツが故障して動かなくなったようでした。そのベンツが、道路をふさいでいるため、後続の車も動けません。
乗客が、何だ何だ??と騒ぎ始めました。
私はつり革につかまっていましたが、そこへ、後部から来た若い男性が私の前まで来て、私がつかまっているつり革を右手でつかみました。
どうして、同じつり革をつかむ? おまけに、彼の右肘が、私の顔の前にくるではありませんか。「鬱陶しいな」と、思いながら、男性をチラッと見ました。
男性も私をチラリと見返しましたが、しかし、バスの前方で起こっていることが気になるのか、私のことを気にしません。私と同じつり革を持ったまま。そして、肘は、私の顔の前から動きません。いつまでこの肘攻撃が続くのかと、我慢していましたが、状況は変わらなかたので、彼の肘をちょっと手ではらいました。
しかし、男性は「すぐ降りるから」と、言って、そのままつり革をつかんでいます。私も、他につかまるところがなかったので、負けずと、またちょろっと手で払いましたが、彼は意に介せず…。
それを見ていたのでしょう、後にいた男性が「彼女が迷惑しているだろう!前のつり革をつかめ!」と、私の代わりに言ってくれました。
と同時に、私がたくさんの荷物を持っていたからでしょうか、右手前に座っていたおじいさんが、反対側の座席に座っていた青年に「彼女を座らせてあげろ」と 言い、私の腕をトントンとたたいて、座るように促してくれました。言われた青年も、何一つ文句も言わずさっと席を譲ってくれました。そして、バスは数十分後、無事に動き出しました。
私と同じつり革をつかんでの肘攻撃も、私に代わり文句を言ってくれたことも、自分ではなく他の人を立たせて座らせてくれたことも、あぁ、やっぱりここは、トルコ!だと感じました。
日本ではどれも、考えられない話です。そう、ここでは、嫌な目に遭っても、それにまさる人の温かさ、人のよさに、まだまだ触れられる機会が多々あります。
そんなトルコが、好きなのです。