2017年8月29日火曜日

お坊さんが気絶するほど美味しい料理のレシピ〜夏の食材王、茄子料理〜


 今回は茄子料理です。

トルコでは、夏の料理の王様は茄子料理だと言われています。日本の関西、神戸近郊では、家々から、イカナゴの釘煮(イカナゴという魚の稚魚の佃煮)を炊いている匂いが漂って来ると、春の到来を感じます。それと同じように、茄子を揚げた匂いが漂ってくると、トルコでは夏を感じるそうです。

この茄子料理には、色々な料理があります。素揚げはもちろん、揚げてトマトソースで和えたもの、焼き茄子のペーストにホワイトソースとチーズを加えたベーンディ(beğendi)、茄子のケバブ、 茄子のピラフ、はたまた茄子ジャムや茄子のデザートまであり、数えたらきりがありません。日本で私たちが、知っている茄子料理では想像できません。

このブログでは、前回の「トルコ料理を楽しむ会」で好評だった茄子料理、イマム バユルドゥ(imam bayıldı:お坊さんの気絶)のレシピをご紹介したいと思います。

この料理の名前は、日本語で「お坊さんの気絶」です。すごいネーミングだと思います。名前に使われているイマム(imam)という言葉は、トルコ語ー日本語辞書に「信徒指導者、導師、イスラム僧、イスラム教国の首長」と書かれています。トルコ語ートルコ語辞書には、その他に「予言者ムハンマドの後、彼の任務を引き受けるカリフへの称号」と書いてあります。そんな色んな意味を持つイマムという言葉を「お坊さん」と訳すのには、軽々しい気もしますが、他にどんな訳があるかというと、頭を悩ませます。

話がそれてしまいました。この料理の名前の由来は「食いしん坊のお坊さんが、これを食べてあまりの美味しさに気絶した」や「とてもケチなお坊さんが、この料理を作る時に使われているオリーブオイルの量を見て、その多さに気絶した」などと言われています。(Artun ÜNSAL 'İstanbul'un Lezzet Tarihi

でも、気絶するのは、熱いオリーブオイルに入れられる茄子ではないでしょうか。
 
さて、そのお坊さんが気絶するほど、美味しい料理のレシピをご紹介します。本来なら、茄子は先ず、素揚げしますが、私は素揚げせず先に電子レンジで蒸してから作ります。

イマム バユルドゥ
材料
小振りの茄子
タマネギ
トマト
ニンニク
イタリアンパセリ(なければパセリ)
シシトウ
砂糖
塩、胡椒
オリーブオイル
熱湯

 1)タマネギを半分に切り、繊維にそって薄くスライスします。



 2)シシトウは、タネを取り、縦に切ります。




 3)トマトの皮をむきます。
 湯向きするより、直接火で焙ります。
 包丁のアゴの部分で、薄く十字に切れ込みをいれます。


   



  
フォークをトマトのヘタに刺し、直接火でクルクルと全体を回し焙ります。                      
皮が少しめくれてくると火を止めます。




皮が簡単に剥けます。




 4)トマトを刻みます。




 5)多目のニンニクを刻み、まずタマネギとニンニクをたっぷりのオリーブオイルで炒めます。
そこにシシトウを加えて、炒めてからトマトも加えて炒めます。砂糖、塩胡椒で味付けします。



 6)イタリアンパセリをみじん切りにします。




 7)炒めた野菜に、みじん切りにしたイタリアンパセリを混ぜます。これで茄子に詰める野菜は完成です。



 8)茄子に切れ込みを入れます。
 9)切れ込みを入れた茄子を水につけてアク抜きをします。




 10)茄子をレンジで蒸して柔らかくします。




 11)フライパンに6)で刻んで、余ったイタリアンパセリの茎を敷きます。茄子がフライパンにくっつかないためです。



 12)フライパンに茄子を並べ、茄子の切れ込みにスプーンの腹を入れ、両サイドに中身を押して広げていきます。

 
 13)広げた茄子の間に、炒めた野菜を詰めます。




 14)熱湯を注ぎます。
 15)オリーブオイルを多目に注ぎ、蓋をして炊きます。




  出来上がり!

  冷菜として召し上がれ。

                                                      


2017年8月24日木曜日

トルコ料理を楽しむ会〜旬の夏野菜をたっぷり使ったメニュー〜




トルコ滞在時代の友人が軽井沢に住んでいます。地元の小学校の先生をしているので、いつも学校教育について、質問や相談にのってもらっています。

彼女は、春には野尻湖に、マイ長靴とマイ網をもってワカサギの稚魚を網ですくいにやってきます。ドロドロの山道を下って行き、まだ寒い湖畔に私と二人、何時間も眼を凝らしてワカサギの群れを探します。夫には呆れられていますが、それが毎年の、私たちのお楽しみの一つです。

彼女もトルコに住んでいたので、トルコ料理が大好きなのですが、帰国してから食べたことがないそうです。

その彼女から、この夏、電話がありました。
「トルコ料理が食べたくなったの。特に、お坊さんの何とかっていうの。そして、まだ味わったことのない私の友人たちにも、トルコ料理を楽しんでほしいのよ」

そんなリクエストに、嬉しくなった私は、一つ返事で「まかして」と答えました。
彼女の言った「お坊さんのなんとか」というのは、トルコ語では「imam bayıldı(イマム バユルドゥ)」、日本語に訳すと「お坊さんの気絶」という茄子料理です。気絶するほど美味しいという意味合いでしょうか。

リクエストのあったイマム バユルドゥ(お坊さんの気絶)が、まずメニューに決まりました。他に、初めてトルコ料理を口にする人たちに、さて何を作ろうか…と悩みました。やはり旬の高原野菜をたっぶり使った料理に決めました。まだまだたくさん別の料理もありますが、それは次回の機会に取っておくことにしました。

今回のメニュー
前菜
・イマム バユルドゥ(imam bayıldı:お坊さんの気絶!という名前の茄子の冷菜)
・ターゼ ファスリエ(taze fasulye:モロッコインゲンのトマト煮込み)
・キョズレンミッシュ クルムズ ビベル(közlenmiş kırmızı biber:パプリカの冷菜)
・ヤランジ チョケレキ サラタス(Yalancı çökelek salatası:チョケレキサラダもどき→ディップにしました)
・サルムサック ヨーウルトル クザルトムッシュ セブゼ(カヴァック・パトルジャン)
(sarmısak yoğrulu kızartmış sebze (kavak ve patlıcan):ズッキーニと茄子の素揚げ ニンニクヨーグルト添え)
・スズメ ヨーウルト (süzme yoğrut:水切りヨーグルト)
・作ってませんが、バゲットを数本
 


メイン
・タヴックル タヴァ(tavuklu tava:チキンの煮込み)
・ピラウ (pilav:ピラフ)
を作りました。

ドルマについてのブログで、茄子を使ったレシピを書いていますが、トルコ料理には、この茄子料理が大変多いのです。まさに茄子の七変化といったところです。今回も、二つの料理に茄子を使っています。焼き茄子を使った、茄子のサラダも大変美味しく、私も大好きなサラダ(というより、ペーストのようです)ですが、次回のお楽しみということで…。

今回の料理は、初めてトルコ料理を味わった人たちに、大変気に入ってもらえました。皆さん、初めて見た料理なので、味を想像できなかったようですが、口にすると「美味しい!」の声が続きました。「トルコに行きたくなった!」と言う話になり、いつか是非、この美味しい料理を食べるトルコ旅行を実現できればいいなと思いました。

同じ食材を使っても、私たちにとって馴染みの薄い料理法に興味を持ってもらえ、レシピを聞かれました。

次のブログからは、いくつか夏野菜を使ったレシピをご紹介したいと思います。


2017年8月15日火曜日

トルコの巻物料理・サルマ〜ブトウの葉だけでなく色々な葉で代用〜




夏に滞在している山小屋のある国際村は、もうすぐ100周年を迎えようとしています。

一年に一度、ここで顔を合わせる知り合いも沢山います。散歩の途中でちょっと寄ると、お茶やお菓子でおもてなしを受けたり、そのまま晩ご飯までご馳走になることもあります。その逆もありです。「ちょっと近くまで来たから寄ったのよ」というのは、なんだか、トルコを思い出して嬉しくなります。なので、我が家にも寄ってくださる方のために、トルコのお菓子を作ったり、マフィンやケーキを焼いて常備するようにしています。

また、この村には、夏の間に、いろいろな活動が企画されます。ピクニックもその一つで、子供から大人まで楽しめる大イベントです。このピクニックは、地元の町の人との交流も兼ねています。今年も、副町長さんを始め、役場の人たちが参加しに来てくれました。皆で一緒に食事もするので、役員をしている各家庭がそれぞれ料理を持ち寄ります。



私はトルコの「ポアチャ」(日本で言えばパンの一種)と「ドルマ」と「サルマ』を作り、水切りヨーグルトも添えて、持って行きました。地の野菜を使って作ったので、皆さんに大変喜んでいただきました。

前回は「ドルマ」の作り方をご紹介しましたね。今回の「サルマ」は、まあ言えばドルマの中身を葉で巻いて作る料理です。「サルマ」という料理名はトルコ語のサルマック(sarmak:巻く、包む)という動詞からきています。ドルマと同様に、暖かいお肉の入ったものと、お米といっしょにスパイスや松の実などをくるんだ冷菜があります。

トルコのアナトリア地方の中央あたりにある、カイセリという町のサルマは、小指の第二関節ぶんほどの大きさです。カイセリは、サルマとマントゥ(←マントゥについてはクリックしてみてください)が小さいことで有名な町です。サルマを太く大きく巻くと「不細工!!」と言われます。中身が葉から出てこないように、きっちりと小さく小さく巻くのは、至難の技です。一体、何百個作ればいいのでしょう?  作るのには、何時間もかかるのに、食べるのは、あっという間です。それでも「美味しい」と喜んで食べる家族の顔を見ると、大変さも吹き飛んでしまうのでしょう。 

一般的に、サルマにはブドウの葉が使われますが、キャベツやフダンソウなども使われます。トルコ語では、パズ(pazı)といいますが、日本ではフダンソウと呼ばれます(地方によって色んな呼び方があるみたいです)。この野菜を日本で手に入れたときは、「サルマが作れる!」と大喜びしました。
フダンソウを見つけて作ったサルマ
今回、ピクニックに持って行くために、暖かいサルマを作る時、それに使う葉を、何で代用しようかと頭を悩ませていました。近くの野菜直売所に買いに行ったら、たまたまツルムラサキの葉が売られていたので、それを使うことにしました。
本来なら、サルマの大きさを揃えた方が見栄えがいいのですが、ツルムラサキの葉の大きさがまちまちなので、一つずつの大きさも変わってしまいました。カイセリのお母さんたちにみられたら「不細工!」と言われそうです…。


さて、このサルマ作り方ですが、基本的に巻きこむ中身や炊き方は、ドルマと同じなので、ドルマの記事を参照していただくことにして、ここでは、少しコツだけをご紹介したいと思います。

その1)
まず、鍋(私はフライパンを使っています)の底に、サルマの中身を作る時に残ったパセリの茎を敷きます。その上に、巻いたサルマを並べます。これは、 サルマが鍋の底で焦げつかないためです。


その2)
サルマを炊く時、巻いた葉がばらけてこないように、お皿をかぶせます。その上に、蓋をして、少しお湯を注いで炊きます。




 出来上がり!

  










水切りヨーグルトを添えて召し上がれ。

2017年8月7日月曜日

トルコ式詰め物、ドルマのレシピ〜高原の夏野菜を使って作る〜


毎年、夏の暑い時期には北信濃にある山小屋で過ごします。ここには、地場の新鮮で美味しい高原野菜が沢山あり、都会では考えられない値段で売られています。これを見ると、無性にトルコ料理が作りたくなります。

今年も、山小屋にやってきました。北信濃には「ぼたんこしょう」という、ピリ辛のピーマンに似た野菜があります。これを使って例年、私はドルマを作るのが夏の習わしです。

さて、ドルマとは、トルコ語のドルマック(dolmak)「満ちる・いっぱいになる」という動詞から派生した言葉で、トルコでは「詰め物料理」を指します。

ドルマには、ピーマンや茄子などの野菜の中に、松の実やカラントと一緒にお米を詰めたスパイシーな冷菜と、お肉とお米を詰めた温菜があります。オスマン時代から受け継がれたレシピもありますが、現在のドルマはというと、各家庭で作られたちょっとしたご馳走になります。友人の家に滞在した時に、「今日の晩ご飯はドルマよ」とお母さんの声がキッチンから美味しそうな匂いとともに聞こえて来ると、思わず嬉しくて顔がほころんだものです。

今回は、私が友人のお母さんに教えてもらった暖かいドルマのレシピをご紹介します。日本でも、料理には各家庭でそれぞれ材料も作り方も、少しずつ違うレシピがあるのと同じで、トルコでもそれぞれの家庭で工夫されたご自慢のレシピがあります。決して、このレシピだけがドルマのレシピではありません。他の材料や作り方もあります。でも、私にとっての夏の定番ドルマは、これなのです。山小屋に来るゲストにもなかなか好評です。

友人のお母さんに教えてもらった、ちょっとしたこつも付け加えてみました。 

ぼたんこしょう、茄子、ズッキーニのドルマ
(ぼたんこしょう7個、小茄子4個、ズッキーニ特大2本、ミンチ500グラムを使いました)
材料             
ぼたんこしょう(なければピーマン)
茄子   
ズッキーニ 
にんにく  
タマネギ  
トマト   
イタリアンパセリ(なければパセリ)
牛ミンチ
お米
バター  
オリーブオイル(すみません、写真には入っていません) 
ビベル・サルチャス(パプリカペースト なければ赤唐辛子のフレーク)
ドマテス・サルチャス(トマトペースト フレッシュトマトを沢山いれた場合は不要です)
スマック酢(このお酢は、トルコ独特の調味料なので手に入れにくいと思います。代わりにバルサミコ酢かレモン汁を使ってください)
ドライミント
塩、胡椒


1)先ず、野菜の下ごしらえです。
ズッキーニは大きかったので、1本を真ん中で二つに切り分け、それぞれの中身をくり抜きます。

ポイント:できるだけ薄くくり抜きます。この時に、底や皮が破れないように気をつけます。










2)茄子も同じように中身をくり抜き、水に漬けてアク抜きをします。へたも取っておきます。






3)ぼたんこしょう(ピーマン)はへたを切り、種を取り除きます。へたも取っておきます。







4)タマネギをみじん切りにして、塩でもみます。







5) ニンニクをみじん切りにします。トマトもニンニク同様にみじん切りにします。
ボールに 4)のタマネギと、ニンニク、トマト、ミンチを入れます。
そこにお米とオリーブオイルは残して、それ以外の全ての材料を入れます。



 スマック酢(バルサミコ酢かレモン汁で代用)を入れます。







6) 全ての材料を混ぜ、ここでオリーブオイルをまわしかけ、そしてまた混ぜます。







7)お米を入れます。今回は無洗米をつかったので、そのまま入れましたが、無洗米でない場合は、あらかじめといだお米を入れます。

ポイント:手のひらに一握り×詰め物の数











8)ぼたんこしょうや茄子に 6)で用意した中身を詰め、へたで蓋をします。ズッキーニの詰め物には、トマトのへたで蓋をしました。今回は、少し中身が余ったので、急遽トマトのドルマも作りました。フライパンにドルマを並べ、バターを加えて、少し熱湯を注ぎます。

ポイント:中身をぎゅうぎゅうに詰めると、爆発するので気をつけてください。一方、中身が余った場合は、くり抜いたジャガイモに詰めることもできます。
新タマネギやトマトを大量に使う場合、水分が沢山でるので、加える熱湯は少なめにします。


9)蓋をして、最初は強火で、沸騰したら中火〜弱火にして煮込みます。全体に火が通って、柔らかくなり、煮汁が少なくなれば出来上がりです。

ポイント:私はフライパンを鍋代わりに使ってドルマを作ります。しかし、茄子やズッキーニなどのドルマは、時々返して煮汁
を染み込ませています。










出来上がり!
無糖ヨーグルト(水切りをすれば、さらによし)をかけて召し上がれば、美味しいです。